汝の足元を掘れ

「汝の足下を掘れ」にウチアタイ ~ しまくとぅば継承は地域から~

 しまくとぅば連絡協議会を立ち上げた翌年の総会で、会員から出身地を問われて「伊是名島です」と応えたら「まず自分の島の言葉を継承したら?」と皮肉交じりに言われた。長い間、肝(ちむ)がかいしていた(心にひっかかっていた)。琉球諸語が消滅の危機にある言語だとユネスコが認定したのは2009年で、事実しまくとぅばを話せる県民は35%(県民意識調査)にまで減少、中でもドナンムヌイー(与那国言葉)が真っ先に消えそうだと言われている。我がふるさといひゃくとぅば(伊是名言葉)はどうだろう?去年の国勢調査によるとしまくとぅばを話せるであろう60歳代以上の人口はむしろ伊是名の方が少ない。与那国町は教育委員会がドナンムヌイーのカルタを音声付きで製作し全世帯に配布、辞典も編纂中で取り組みを強化している。最も危ういのは伊是名ではないのかと思う。総会で会員が投げかけた言葉にウチアタイ(心に思い当たること)しているこの頃だ。。
「汝の足元を掘れ そこに泉あり」との名言があるが、最近思いだした伊是名言葉に「ワイ? ッウワイ!」がある。島では相手の話を聞き返す時「何?」を「ワイ?」といい、肯定の「そうだ」を「ッwウワイ!」という。英語のwhyにも聞こえ伊是名出身の会話を聞いていると「ワイワイ」と騒々しい。もう一つ「天井ピア」というのを聞いたことがあるだろうか?ヤモリのことである。しまくとぅばは同じ島でも集落毎に微妙に異なる。私の集落字諸見では「やーどぅ」だが、別の字は「天井ピア」という。鳴き声は「ケッケッケッケッ・・・」なのに意味不明だ。
 閑話休題:しーぶん(おまけ)に「うら」と「うが」を紹介したい。「うら」は日本古語の「うら」で二人称の尊敬「あなた」のこと。同輩や後輩でも敬意を表して使用する。また「うが」は目上に対する貴方のこと。しかし「うが」は沖縄語辞典(国立国語研究所編)によると、相手を見下して使う「おのれ、きさま」とある。組踊「二童敵打」では月見のシーンでは、天麻和利が部下たちに酒を勧める時「おがたちも飲みゆ」といい部下に敬語を使っている。なぜ、伊是名で尊敬語になったのか?解明がのぞまれる。琉球諸語は日本語の姉妹語で上代の言葉が今でも残っているが、伊是名島にはまだ味わい深い「しまくとぅば・いひゃくとぅば」があるかもしれない。
 平成18年に「しまくとぅばの日」が制定されて今年は10年の節目になる。県は平成15年に続いて2回目の県民意識調査を今年実施する。話者の増減が気になるところだ。しまくとぅばの保存継承で指摘されていることは、どこの言葉を教えるか、標準語や表記法はどうするかなど課題は多いが、まず各市町村はそれぞれの地域の言葉を継承することが肝要だと思う。汝の足下を掘れ・・・。