しまくとぅばの普及 需要は掘り起こせる

 琉球新報4月26日の地方面に掲載された「金武言葉で修了証」健康教室「いっぺがはまやびた」を読んで年々、話者が減少しているしまくとぅばの普及継承に一条の光を見いだした。町地域包括支援センターが膝の痛みや腰痛、認知症予防のため開催した「ちゃーがんじゅう教室」の参加者に交付した修了証を担当の女性職員が、上司のアドバイスでしまくとぅばにしたと。修了証を受け取った高齢者は母語・しまの言葉を喜び、件の担当者も「地域の先輩方とコミュニケションが取れた」と満足した様子。町文化協会しまくとぅば部会長も「若い人が使うことで高齢者も喜ぶ。会話が生まれ良い循環が生まれる」と評価している。これを機会に、ちゃーがんじゅう教室の講座で今度は高齢者が若い職員を対象にしまくとぅばを教えたらどうだろうか。
しまくとぅば普及活動でよく耳にするのは「しまくとぅばがウチナーンチュの魂アイデンティティーの根本、文化の基層をなす大切な言語」ということを理解しても日常的に必要性がない、役にたたないと言われることだ。確かに家庭や地域で使わないし入学試験や就職試験に出題される訳でもない。しまくとぅばを知らなくても三線を弾けるし、琉球舞踊だって踊れる。しかし、しまくとぅば継承の必要性は県民の大方が認めているわけだから、需要を創ればいいのではないか。今回の金武町のように足下に眠っている機会を掘り起こす、その積み重ねが効果を生む。つい先日、那覇市医師会の在宅医療介護連携支援センターから、施設名をしまくとぅばでも付けたいと相談があった。1月に県立博物館・美術館で開催された在宅ケアネット市民フォーラムで「地域包括ケア」をテーマにした芝居「ちゅいしーじー劇場」が上演されたが、これに因んでセンターのしまくとぅば名称を「ちゅいしーじーセンター」にしたいと。「ちゅいしーじー」とは、互いに助け合うさまを意味する。高齢化社会になり老々介護で悲惨な事件も報じられる昨今、癒される言葉だ。
しまくとぅばの需要を掘り起こすことで、提案したいのは県議会や市町村議会で質疑の一部をしまくとぅばで行ってはどうかということ。06年2月定例議会で「しまくとぅばの日に関する条例」が制定された時、提案者を代表して登壇した浦崎唯昭氏(現副知事)は提案理由冒頭をしまくとぅばで行っている。市町村議会で過去に一部をしまくとぅばで行ったのは、那覇市と与那原町、南風原町がある。しかし今はほとんど行われていない。県内41市町村議会は条例制定後これまでに36議会が「しまくとぅばの普及促進」を決議している。しまくとぅばの普及継承は県政の重要課題の一つで、近く「しまくとぅば普及センター」も設置される。需要がなければ普及継承は遅々として進まない。行政機関、学校教育の場で需要の掘り起こしが求められよう。
那覇市文化協会うちなーぐち部会    事務局長 名嘉山秀信

この原稿は4月30日の琉球新報論壇に掲載